阿部仁哉✕鈴木和輝:ドイツ留学が育てた響きのリサイタル

インタビュー
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クラシックの本場であるヨーロッパ、主にドイツにて長く音楽を学び研鑽を積んだピアニスト、阿部仁哉さん、鈴木和輝さんによるリサイタルが、2026年3月に東京・千葉で開催されます。

今回はそんなお二人に、ドイツで培った音楽経験や考え方、今回のリサイタルへ向けた思いなどについてお話を伺いました。

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異文化の中で磨かれた、自分自身の音楽

同じドイツで学んだ阿部さんと鈴木さんですが、もともとは日本の大学で学んでいたころ、二人でよく遊びながら自宅にあるピアノで連弾などをされていたそうです。

鈴木「学んでいた先生も違いますのでテクニックやタッチなどは違いがありましたし、音の性質や音楽観に対しても100%一致しているというわけではありませんでした。そしてそれぞれの好みにも、違いがあれば似ている箇所もあります。
それに対してネガティブな感情もなく、ただそういうものだとお互いに受け入れ合っている状態がまた心地よさを生んでいますし、知識についてはお互いにリスペクトを感じています。
あえて共通点と相違点を私の観点から一つずつあげるとするのならば、二人とも理論派で、片方はシックなものを好み、片方は派手なのを好む、といった具合ですかね…。どちらがどちらなのかは演奏を聴いてのお楽しみということで!」

阿部「2人が目指す音楽のあり方は共通していながら、自分が奏でる部分では、より自分が得意としていることに違いがあるというのをお互いが理解しているからこその関係なのかなと思っています。
おそらく、こんな風にできる仲間を持てることはなかなかないと思うので、感謝するとともに幸せな事だなと感じています。」

そんなお二人ですが、ドイツで音楽を学んできた中で、それぞれご自身の音楽観や演奏スタイルにどのような影響を与えたかについて聞いてみました。

阿部さんは、元々ドイツで学んでいらした師についていることもあり、ドイツという地でどのように音楽が感じられているのかについてはたくさんお話を聞かせてもらっていたと言います。

阿部「日本国内で学びを続ける中で、自分の中でぼんやりとしていた《ドイツでどのように音楽が感じられているか》について、直接触れることができた実感があります。
《音楽はまず何より心から楽しむもの》…当たり前のように聞こえますが、本当に自分が楽しむためには、その裏に並々ならぬ努力が必要なことがわかりました。
また、音楽だけではありませんが芸術との密接度の高さも感じました。教会のミサにはじまり、週末になるとあちこち でコンサートが行われ、散歩に出かければ音楽に出会えます。
そのため、自分がこんな音楽が聴きたいなと欲した時に、ちゃんと出会うことができる。このことは音楽を学ぶという点において本当に素敵な環境でした。」

そんな阿部さんは、ドイツに行く前も帰ってきてからも、この学びを経た今、日本で演奏することにどんな意味があるかについて自問自答し続けているそうです。

阿部「明確な答えは今も追い続けている段階ですが、一つ感じているのはやはり異文化交流ができるということです。
クラシック音楽は元はヨーロッパ発祥のもの。その土地の地政学や人柄等いろいろなものを土台として文化が成り立っています。日本も周知のとおり特別な文化を持っている国なので、違いがあるからこそお互いに新鮮なものとして見つめあうことができるのではないかと感じています。
お互いのどんなところが良いのかを見つけていく視点を持つことは、人と人が関わりあう形としてとても健全で、前へ進んでいくための糧になるだろうと感じています。」

一方の鈴木さんは、音楽観がまるっきり変わるというより、より明瞭に、より深いものを感じられたそうです。

鈴木「日本にいた頃よりも思考し、情報収集や他者の演奏を分析したり、自分と比較したりするようになりました。 また、こうでなくてはならない、失敗してはいけないという思考が、こうなるとより良い、失敗よりも挑戦するほうが重要だという考えへ変わっていき、本番への意識も変わったのは大きいと思います。
テクニック面において、体の使い方などは少し変わったかもしれませんがそれほど大きいギャップはなく、そこで苦戦を強いられることはありませんでした。日本で師事していた先生の教えのおかげだと感じています。
ドイツに来てからは、学んだ理論をいかに身体から体現し音楽へと変換していくか鍛えられたかと思います。
メロディー・ハーモニー・リズムなど、いろいろな音楽の要素の機能をただ知識として知っている・認識するだけでなく、それらのポテンシャルをいかに引き出していくか、裏付けられた説得力と共にどのような響きを作りあげていくのか日頃から鍛錬しています。」

そんなドイツで学んでいた時代、特に印象に残っている師や言葉、出来事についても尋ねてみました。

鈴木「たくさんあるので一つ二つに絞れません(笑)。ですが、特筆するならば自分のタッチを褒めていただけた時が何より幸せでしたし、自信にもつながりました。
小さなことですが、このクラシック音楽の本場ヨーロッパで、自分の気にかけていたこのタッチとこの音色を受け入れていただけたということがとても嬉しかったです。
今までの多くの教えや出来事が今の自分の音楽の血や肉となっているので、演奏で実感していただけたら幸いです。
また、ドイツでは様々な国の人がいる環境、そして日本語が使えずドイツ語や英語の生活で精神的にタフになったと思いますし、そこから多くのことが学べたと実感しています。
例えば、学校の中でもドイツ人だけでなくいろいろな国籍の先生や生徒がいましたし、その先生方もドイツだけでなくロシアやイタリア、フランスなどの先生から学んだという方々もいました。
日本ではきっちりしっかりとした雰囲気を、ドイツではややゆるく伸び伸びと、特に個人主義を強く感じましたね。
どちらも良し悪しはあり優劣を付けられるものではありませんが、この伸び伸びとした個人主義が自分にはよくはまっていたと思います。
例えば、日本では同じ時期に同学年の人たちが同時に実技試験をしますが、ドイツの音大と日本の音大では学年の換算システムが違うため、人によって実技試験の時期も異なり、実技試験もリサイタル形式で行われます。
このリサイタル式の試験のために、何年かかけて自分のペースで準備できるというものが、日本で学んでいた頃とは違うシステムであり、日本では体験できない貴重な経験でした。」

阿部「僕も一つに絞るのはとても難しいのですが…ウィーンの学校へ行ったときに、授業期間の終わりに色々なコンサートが開催されるのですが、ありがたいことに幾つかの本番に出演させてもらえた時のことですかね。
そのうちの一つが隣町の素敵なサロンでのコンサートだったのですが、バタバタしていたのでそこがどんな場所なのかよくわからないまま本番を迎えました。
演奏を終えて一人の先生から、ここはウィーン歌劇場で活躍していた人たちが老後を過ごす場所なのだと聞かされた時に、とても驚いたと同時に古い時代から脈々とつながってきた音楽を聴き、奏でてきた人たちの前で演奏を披露できたことが、音楽の歴史の1ページに自分も足を踏み入れたような感覚がして、すごく感激したことをよく覚えています。」

作曲家たちの影響が、いまこのリサイタルへ

さて、今回のプログラムは国や時代を越えた作品が並んでいますが、全体としてどのような流れや世界観を思い描いているのでしょうか。プログラムに込めた思いについてもお二人に伺いました。

阿部「おっしゃっていただいたように、まさに意識的に国や時代を超えるような作品を並べてみました。
今回のプログラムは、演奏者2人が今個人的に必要だと思う曲を並べながら、音楽が人々の営みの流れの中で出来上がってきたものであることを強調してみました。
例えば、ショパンのノクターンはジョン・フィールドという作曲家の音楽に影響されていますし、ブラームスの変奏曲は、タイトルにもある通りヘンデルの作曲した主題に基づいてつくられています。
時代や国や立場が違っていても、様々な人がひとつの筋となってつながり、このリサイタルという形に結びついているということを、現場へいらしてもらった方には少しでも感じていただけたらと思っています。」

鈴木「今回、約10年振りに日本でピアノソロ作品を弾くにあたって、勝手ながらも自分自身の弾きたい曲を根底に置き、且つ自分のコレペティートアとして勉強した面を活かした選曲にしました。
今我々が弾いているクラシック曲は何十年も前あるいは何百年も前に書かれた曲ですが、廃れることなく根強く愛されています。
そして、今回演奏するクープランの墓を作曲したラヴェルや、先ほど話していたブラームスの変奏曲は、バロック時代の音楽に影響を受け、これらの作品を書いています。
このように、我々が昔の作曲家に影響されているように、その作曲家たちもさらにそれ以前の音楽から影響や印象を受け、現代に至っています。
今回の演奏会で我々も、いらっしゃってくださる皆様にこの影響のつながりをお渡しできたらと思っています。」

ドイツで培った音楽的思考は、フランス音楽やショパンを演奏する際にも活きているのですね。

阿部「大いに活きていると感じます。いわゆる一流と言われている作曲家達の譜面を見ると、過去の作曲家達の残した遺産をとてもよく勉強し、正当に引き継いでいる事をひしひしと感じます。 活動の場所はそれぞれでも、音楽という一つの流れは国を超えて脈々と繋がっています。
その中心地の一つとなっていたドイツで音楽に触れられたことは、どんな曲に対しても大切なヒントを与えてくれる機会だったと思っています。」

鈴木「フランスやポーランド、イタリア、ロシア、いかなる国の音楽や異なる時代、ジャンルでも、音楽、言うなれば芸術の核にあたる部分として共通している点はあり、そこに軸があるのならばどの作曲家の演奏にも活きてくると思います。
ドイツでは、その軸を元に、楽譜に書かれている情報を丁寧に読み取り、自分の中で明確なイメージを持つということが大切だということを学びました。
自分の中でイメージできないものは具現するのも難しく、どっちつかずで曖昧なもの、あるいは人工的で不自然なものは説得力も魅力も少なく感じられます。
輝かしい響きはより輝かしく、シンプルなものはシンプルに、情熱的なものはより熱く、ぼやかしたようなものはそのままぼやかしたものが活きるように、自然で効果的、大胆且つ繊細な音楽を奏でられるよう心がけています。」

最後に、観客の皆さんへ、この演奏会でどのような“景色”や“感情”を持ち帰ってほしいのか。そして今後、ピアニスト としてさらに深めていきたいテーマやレパートリーについて伺いました。

阿部「理想的だなと思うのは、特定のものではなく、聴きに来てくださった方が皆さんそれぞれに違う感情や景色を持って帰れたなと思ってもらえることだと考えています。
経験や境遇は人によって違うものだと思うので、僕たちの音が一人ひとりの生活の中の1シーンとして機能し、何か感情が動くきっかけになれば嬉しいです。
今回はソロのリサイタルとしての開催ですが、今後は連弾や2台ピアノなど、2人のピアニストだからこそできる曲にも挑戦していきたいです。
実は、僕の中では大きな目標としていつかやりたい楽曲が1つあるのですが、それはまだ秘密にさせてもらって (笑)、気になる方は是非今後も僕たちの公演を目に留めておいていただけたらなと思います。」

鈴木「今回、様々な曲が演奏されますが、それぞれが独特で固有の雰囲気を持っています。私が弾く各曲も、それぞれが匂いや風景、空気感、温度、色彩などいろいろな次元での特徴を含み、弾いている最中にそれらが浮かびあがります。
ですが、今回はあえてその内容を明言しないようにしたいと考えております。言ってしまうと、知っている曲はなおさら、知らない曲まで聴く前にその曲や私の演奏に対して偏見を持ってしまいますし、人によって感じ方は様々であり、演奏の受け取り手の想像を私の言葉によって影響を受けて欲しくないからです。
自分が想像していたものとお客様の受け取った印象に違いがあれば、それはそれで面白みがあると思いますしね。
今回の演奏会では、二人の音楽観やテクニックの違い、響きへの向き合い方の違いを楽しむことはもちろん、どこか似ているような箇所、というのも楽しめると思います。
また、ラヴェルは生涯を通して1、2位を争う好きな作曲家なので、今後もラヴェルの作品を弾いていきたいと考えています。
それから、ピアノ・ソロ作品にはあまりないので残念なのですがワーグナーやリヒャルト・シュトラウスの作品などのドイツ作曲家も研究していき、2台ピアノや連弾などの編曲、ドイツ歌曲やオペラアリアなどを通して発表できる機会が あればと思っています。
他にも、ショパンやラフマニノフ、ベートーヴェンなど数えきれないほど弾きたい作品があるので、焦らずじっくりとこれからも研鑽を積み重ねていきます。」

公演情報

阿部仁哉×鈴木和輝
ピアノ・リサイタル

◆公演スケジュール

  • 2026年3月7日(土) 14:00開演 @千葉県南総文化ホール
  • 2026年3月15日(日) 17:00開演 @ルーテル市ヶ谷ホール(東京都)

◆曲目

  • ショパン:ノクターン第1番 変ロ短調 Op.9-1
  • ブラームス:ヘンデルの主題による変奏曲とフーガ 変ロ長調 Op.24
  • ラヴェル:クープランの墓
  • ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ
  • ワーグナー=リスト:≪トリスタンとイゾルデ≫より イゾルデの愛の死

◆チケット窓口:チケットぴあ

◆問合せ:エームジークプロジェクト阿部仁哉 電話070-2209-6085

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