創作の過程を研究し、演奏で追体験:佐藤杏樹プロデュース公演

インタビュー
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日伊国交160周年という節目にふさわしいコンサートが開催される。

特集されるのは、イタリアの伝説的ハーピスト、クレリア・ガッティ・アルドロヴァンディが初演した作品群。

その歴史的レパートリーに光を当てるのは、ハープ奏者の佐藤杏樹だ。親しみやすいレクチャートークを交えながら、作品の背景と音楽の魅力を立体的に届ける。

今回は、そんな杏樹さんにハープやプログラム全体への思いなどについてお話を伺った。

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「きらめき」だけではない、ハープの本質

一般にハープと聞いて思い浮かぶのは、オーケストラの後方できらめきを添える優雅な姿かもしれない。

しかし杏樹さんは、その固定観念を静かに揺さぶる。

「ハープは“きらめきの楽器”という印象が強いですが、実はもっと大胆で、時に鋭く、深い表現力を秘めています」

ヒンデミットの作品では、硬質で緊張感に満ちた響きが前面に現れ、カステルヌオーヴォ=テデスコでは、リズムを刻み、躍動し、情熱を放つ。

ハープは歌うだけでなく、語り、叫び、そして舞う楽器でもあるのだ。

「普段オーケストラを聴かれる方ほど、ハープという楽器の奥行きや可能性に新しい発見をしていただけるのではないかなと思っています」

可憐さの奥に潜む力強さ。その両義性こそが、今回の公演で体験してほしいハープの真の姿だ。

初演者と作曲家の対話を追体験する

プログラムには、「ロミオとジュリエット」「ゴッドファーザー」で知られるニーノ・ロータの歌心あふれる作品が並ぶ。

ハープ独奏、そしてフルートとの二重奏で描かれる旋律は、映画音楽とはまた異なる親密な表情を見せるだろう。

一方で、ヒンデミットの重厚で構築的な音楽は、詩の朗読とともに提示され、ハープのイメージを鮮やかに塗り替える。

さらに、カステルヌオーヴォ=テデスコのハープ小協奏曲は、クラリネット3本と弦楽四重奏という珍しい初演版で上演。アクロバティックなペダルワークとスペインの情熱が交錯する、鮮烈な響きが待っている。

杏樹さん自身が最も心を躍らせているのは、作品誕生のプロセスを追体験することだという。

「クレリア・ガッティ・アルドロヴァンディが、作曲家たちとどのように作品を共につくり上げていったのか。その創作の過程を研究し、演奏しながら追体験していくことが、いちばんの楽しみです」

初演者は単なる“最初の演奏者”ではない。作曲家と対話を重ね、技術的な可能性を提示し、ときに楽曲の方向性に影響を与える存在であり、楽譜の背後には試行錯誤や議論、ひらめきの瞬間が積み重なっている。

杏樹さんが作曲家に焦点を当てるシリーズと、ハーピストに焦点を当てるシリーズを並行して企画しているのも、創作に想いを馳せることの面白さを、お客様と分かち合いたいという思いからだ。

 音が混ざり合う、その瞬間に立ち会う

今回の公演では、イタリア人クラリネット奏者アレッサンドロ・ベヴェラリをはじめ、実力派の共演者たちが集う。杏樹さんは彼らを「素晴らしい対話の相手」と表現する。

「異なる楽器の音色が混ざり合う瞬間に生まれるテクスチャや色合いを、ライブならではの呼吸とともに楽しんでいただければと思います」

室内楽の醍醐味は、音の重なりが生む化学反応にある。ハープが前に出る瞬間もあれば、支えに回る瞬間もある。クラリネットや弦楽器と交わることで、単独では生まれない色彩が立ち上がる。

そこには譜面を超えた対話がある。まなざし、呼吸、わずかな間合いの変化。録音では捉えきれない“生”の緊張感が、会場を包み込む。

ハープという楽器の再発見であると同時に、創作の物語をたどる時間。

可憐という言葉だけでは語り尽くせない響きの世界が、この公演で鮮やかに解き放たれるだろう。

公演概要

◆日時:2026年3月2日(月) 19:00開演

◆会場:五反田文化センター

◆出演:佐藤杏樹(ハープ・お話)、荒川洋(フルート)、アレッサンドロ・ベヴェラリ(クラリネット)、對馬佳祐(ヴァイオリン)、田中麻祐子(クラリネット)、金井清(バスクラリネット)、榎本郁(ヴァイオリン)、塙亜里子(ヴィオラ)、武井英哉(チェロ)

◆曲目

  • ニーノ・ロータ:ハープのためのサラバンドとトッカータ
  • パウル・ヒンデミット:ハープのためのソナタ
  • ニーノ・ロータ:フルートとハープのためのソナタ
  • マリオ・カステルヌオーヴォ=テデスコ:ハープのためのコンチェルティーノOp. 93 他

◆チケット:livepocket にて発売中

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