NHK交響楽団の首席第二ヴァイオリン奏者・大宮臨太郎さんは、桐朋学園大学在学中に同団のオーディションに合格。国内外の数々のコンクールで入賞するなど幅広い活躍を経て、地元横浜にUターンしたそうです。
地元横浜の素晴らしさや、公演で披露する管弦楽トリオの魅力、次世代へクラシック音楽を普及していきたい思いについて伺いました。
地元・横浜への移住をきっかけに今回の公演を企画
――4年前に、生まれ育った横浜に戻って来られたそうですね。ぜひ、横浜の魅力を教えてください。
大宮 私自身が子育て中で、公園や街路樹が多いところに魅力を感じています。身近な方とつながれるコミュニティも豊富で、出会う人の優しさを感じているんです。
――いいですね。横浜で暮らす中で、「人の優しさ」を実感するのはどんな時ですか?
大宮 子育て世代の私たち夫婦にとても温かく寄り添ってくださる瞬間ですね。私はよく子どもを連れて地域住民の方が開いている近所のコミュニティカフェに行くのですが、若い人からご高齢の方までいろいろな方に出会います。
そこでは、誰もが分け隔てなく会話を楽しんでいるんです。皆さん、私の子どものこともいつも気にかけてくれ、自然と面倒を見てくださいます。
他にも、会えば必ず声をかけてくださるご近所さん。自家製の野菜をお裾分けしてくださる方。子どもに毎朝大きな声で挨拶をしてくださる方など優しい方がたくさんいらっしゃいます。
――大宮さんの周りには素敵な方が多いのですね。今回横浜で演奏会を企画したのも、身近な人とのお話がきっかけですか?
大宮 はい。2年前くらいからでしょうか。近所のコミュニティの方々に、演奏を聴かせて欲しいとよく言われていたんです。演奏会を通して、NHK交響楽団のヴァイオリン奏者である自分のことも、もっと知ってもらえたらと考えました。普段は聴く機会が少ないクラシック音楽の演奏や空気感も楽しんでいただきたいですね。
――地元の演奏会だと身近な方も足を運びやすいですものね。
大宮 そうですね。横浜での演奏会なので、近所の方もたくさんお誘いしました。普段お付き合いがある方に、感謝の気持ちを込めてクラシック音楽を届けたいと思っています。もちろん、横浜の方だけでなく、いろいろな方に興味を持っていただき、公演を聴きに来ていただけると嬉しいです。
弦楽トリオは自分たちで音楽を作り上げていくのが醍醐味
――今回の公演は、普段クラシック音楽になじみがない方にもぜひ聴いてもらいたいと考えているんですよね?
大宮 私たちN響メンバーの本気の演奏を生で聴いて、少しでもクラシック音楽に興味を持っていただきたいです。
――来場するお客様にはどのように楽しんでもらいたいですか?
大宮 クラシック音楽に対して、「敷居が高い」「堅苦しい」というイメージの方も多いと思います。ただ、非日常の空間だからこそ、あえてその場や時間を堪能していただきたいです。
――公演を聴きに来る方の中には、クラシック音楽初心者の方もいると思います。オーケストラと今回の弦楽トリオではどんな違いがあるのか、教えてもらえますか。
大宮 1番大きな違いは、指揮者がいないことですね。演奏中は互いの顔を見ながら、瞬時にその場の空気を感じ取って音を出しています。息を合わせながら、自分たちで音楽を作り上げていくのが醍醐味だと私は感じます。
――楽しみですね。今回の公演はN響の中村翔太郎さん、宮坂拡志さんとの弦楽トリオ。共演されるようになったきっかけを教えてください。
大宮 中村さんは同世代で同じ横浜市民。宮坂さんは同級生で高1からの長い付き合いです。普段、N響でも演奏を一緒にしているので、性格や演奏スタイルも分かっています。そんなふたりなので、今回私が演奏会を企画するにあたっても、快く引き受けてくれました。
――ちなみに、トリオならではの魅力もお伺いしたいです。
大宮 弦楽四重奏は高音から低音までバランスの取れた編成なのに対し、弦楽トリオは実は少しアンバランスかもしれません。誰かひとりがメロディーパートを担当するわけではなく、3人それぞれが独立しながら、音を合わせていく。いい意味で自由度が高く、演奏者の力量が試されます。トリオ向けの名曲も多く、私にとってもやりがいがあるアンサンブルです。
生まれ育った横浜から、次世代にクラシック音楽を届けていきたい
――横浜で生まれ育ったことで、大宮さん自身の音楽家としての活動にどのような影響がありますか?
大宮 緑が多い横浜で過ごした子ども時代はとても大切な思い出で、今でも地元の友達とは付き合いがあります。自分の子どもにも同じような経験をさせたいと思い、戻ってきました。
今、上の子が通っている小学校は私の母校で。そのご縁から依頼を受け、音楽体験の一環として年に一度子どもたちの前で演奏をさせてもらっています。
自分が小さい頃に学んだ校舎で演奏し、次世代の子どもたちにクラシック音楽を届ける。この貴重な機会が、自分の音楽活動の糧になっていると感じています。
――「今後はさらに横浜で演奏する機会を増やしたい」とお話しされていたのも印象的でした。どのような活動を考えられているのでしょうか?
大宮 横浜で演奏会を開催することで、N響で活躍している地元出身のヴァイオリニストもいるのだと知るきっかけになればと。実際に間近で音楽を聴くことで、クラシック音楽へ興味を持つ人を増やせたらとも考えています。
――クラシック音楽の文化を伝えていく活動はとても素敵ですね。どんな人に音楽を届けていきたいですか?
大宮 特に、若い世代ですね。今は、若者ほどクラシック音楽への興味が少なくなっているような気がします。演奏会に行くことも少なく、クラシック音楽と触れ合う機会が減ってきたのもひとつの要因ではないかと思います。
私は今、ありがたいことに母校で演奏する機会があり、少しずつ認知されてきたようで。上の子が、「お父さんはヴァイオリニストでしょ」と言われることが増えたみたいなんです。
きっと、多感な時期の子どもたちにとって、「ぼく、小学校の時に本物のヴァイオリンの演奏を聴いたことがあるんだよ!」という経験は、貴重な体験なのではないでしょうか。
小さい頃に私の演奏を聴いたのがきっかけでクラシック音楽が好きになり、少しでも演奏会に足を運んでくれる人を増やしたいです。そうして、次世代へとクラシック音楽をつないでいきたいと思い、活動しています。
公演情報

N響メンバーによる弦楽トリオ
- 日時:2026年10月11日(日) 14:00開演
- 会場:横浜市青葉区民文化センター フィリアホール
- 出演:大宮臨太郎(ヴァイオリン)、中村翔太郎(ヴィオラ)、宮坂拡志(チェロ)
- 曲目:シューベルト『弦楽三重奏 変ロ長調 D471』/J.S.バッハ(シトコヴェツキー編)『ゴルトベルク変奏曲 BWV988(弦楽三重奏編)』


