中学や高校の吹奏楽部に入部するとよく起こるのが、楽器決めでのトラブルです。
私も吹奏楽部出身ですので、毎年春にはこうした揉めごとが新入生の中で起こってきました。
大人になった今、なぜこのようなトラブルが起こるのか振り返ってみた時、たった一つのポイントを意識するだけで、楽器決めトラブルを防ぐことができると考えました。
また、そうはいっても「希望していない楽器になってしまった」という部員は少なからず起こってしまいますので、そうなってしまった場合の考え方も紹介したいと思います。
吹奏楽部の個人や部活全体の目標設定の例は、コチラの記事でご紹介しています。
「吹奏楽部は性格悪い」というイメージがある人は、コチラの記事で理由を整理しています。
正しいパートの決め方
吹奏楽部の人気楽器といえば、フルート・サックス・トランペットなど、主にメロディ担当でソロを吹く機会も多い高音楽器です。
逆に伴奏が多く目立たない中・低音楽器はあまり人気がなく、自然と「高音楽器は一軍」といった、吹奏楽部の楽器カーストも発生してしまいます。
そうなると必然的に、希望が集中するパートとしては、上記の高音楽器が多数を占めてきます。
とはいえ、フルートを希望した人全員をフルートパートにするわけにはいきませんから、条件を満たす人から優先的に採用していく必要があります。
この、楽器を決める優先度の設定が、楽器決めトラブルを防ぐ唯一の方法だと思います。
結論から言うと、新入部員の正しい楽器の決め方は以下だと考えます。
経験 > 適正 > 自持ち > 希望
よくある優先の仕方として、「楽器を持っている人優先」「希望しているパート優先」をしてしまいがちですが、これをするからトラブルが起こるのではないかと思います。
結局のところ、楽器の経験があったり適正のある人が優先されるべきで、その方が部活全体としてもメリットが大きくなります。
「フルートを吹きたい!」としつこく希望して採用されたものの、3年間全く吹けなかったら、本人の自己満足だけで終わり、他の部員は誰もハッピーになれませんよね。
では、「なぜ経験を最優先するのか」「なぜ楽器自持ちの優先度は低いのか」など、それぞれの優先度の理由について解説していきます。
第1優先:経験
経験を最優先する理由は、言わずもがな即戦力となるからです。
特に中学校の場合は多くが未経験ですから、その中で楽器経験がある人が希望するパートに入るのは必然と言えるでしょう。
また、経験があるからこそ、パート内のトレーニングで指導ができるなど、部活全体にも大きな影響を与えることができるのです。
後にも書きますが、吹奏楽部は団体行動ですので、本人の自己満足より、部活に良い影響を与えるかどうかを重要視するべきです。
第2優先:適正
希望している楽器の経験はないけど、その楽器を吹くのに適したスキルがある人を、経験者の次に優先して採用しましょう。
部活に入部すると、ひととおり楽器を体験してみる流れになると思います。
そこで吹けるかどうかも適正を見極める上で重要ですが、パートを決める先輩や顧問は以下のポイントも考慮しましょう。
・体格:テューバを持てるか、コントラバスを弾ける身長があるかなど。
・口の形:木管と金管によって、合っている口は変わります。あと歯並びが良いかも。
・高音と低音が出せるか:とりあえず音が出た、よりは優先したい。
私は中学で入部した時、顧問との面談で希望の楽器は問われましたが、それと併せて口のチェックもされました。「希望するのは良いけど、吹けないんじゃない?」という見定めをされていたのです。
木管を希望していたけど、実は金管向きの口だったならば、金管を担当したほうが本人も吹けてやりがいがあります。未経験ならば、まずは夢より自分の適性を知ることが大切です。
第3優先:自持ち
なぜ楽器を持っている人を優先しないのかと言うと、「持っている」と「吹ける」は全く別物だからです。
極端な話、全く吹けないのにフルートがやりたい場合、楽器さえ買ってしまえば、フルート吹ける適正のある人より優遇されるって、おかしくないですか?
それだったら、そのフルートを吹けるスキルのある人に譲って吹いてもらうほうが、部活全体にとっても、フルートにとっても幸せになれると思いませんか?
吹奏楽部は団体行動ですので、どこまでいってもチームワークが必要です。自分のことだけ考えている人は、部活に全く良い影響を与えません。
そういったところから部員同士に亀裂が入り、外から「吹奏楽部員は性格が悪い」と思われてしまうのです。
ただの「吹きたい希望」は最後まで後回しにする
ここで、私の体験談を話します。
私が中学3年生になった春、入部した1年生の中に、一人「絶対にフルートがいい!」と言い張る女子がいました。
彼女は顧問に「フルートになれなかったら入部しませんから!」とまで言い張り、それは部員全員にも知れ渡り、楽器の体験期間に入ります。
彼女はニコニコしながら、初めてフルートを手にして体験してみますが、全く音は出ません。むしろ他の管楽器や打楽器はそれなりに出来ていたので、そっちのパートに入る方が良いと思うよと、多くの先輩達が薦めますが、本人は全く聞く耳を持ちません。
結果、彼女の圧に屈した顧問は、彼女をフルートパートに入れます。
本人は飛び跳ねて大喜びしますが、その時の周りの反応、それからの彼女の3年間はー、ご想像におまかせします。
先ほども述べましたが、ただの「やりたい」が悪い方向に進んだ場合、部活全体はもちろん、本人の自己満足すらもなくなりますので、部活に全く良い影響を与えません。
楽器決めでトラブルが起こらないようにするためには、経験と適正を優先して決めることを伝えた上で判断していくことが大切になると思います。
未経験の場合、「なんかかっこいいから」といった思いに縛られるのではなく、きちんと自分の適正を知って、それに合った未知の楽器を紹介してもらうほうが楽しいのではないかと思います。
希望していないパートになってしまったら
そうはいっても、希望していなかったパートになってしまう部員は出てしまうと思います。
この章では、希望していなかったパートになってしまった場合の考え方を紹介します。
- その場ですぐに辞めない
- その楽器になった理由を訊く
- その楽器の魅力を知る
1.その場ですぐに辞めない
希望の楽器になれなかっただけで部活を辞めるのは、絶対にやめましょう。間違いなく人生で後悔します。
部活が忙しくてしんどい、人間関係が辛いといった場合は仕方がありません。仕方がない理由は、それを実際に経験しているからです。
ただし、実際に辞める場合には迷惑をかけたくないことも考えておきましょう。
実際に経験して自分には合っていないと判断して辞めるのは正しいですが、まだ何もやっていないのに全てを手放すのは間違っています。
人生、自分の思い通りにならないことなんてたくさんあります。中には、理不尽で全く納得しようがないことも経験します。
一方で、希望の楽器になれず、顧問から指名された楽器は、本当に理不尽で納得できないことでしょうか?それを判断するためにも、まずは理由を知ることが大切です。
むしろ、思い通りにならない時のほうが、学ぶことがたくさんありますし、それを理解して乗り越えれば間違いなく人生に良い影響を与えます。逃げたらそこまでです。
2.その楽器になった理由を訊く
「フルートを希望していたのに、トロンボーンになってしまった!」
「なぜ木管を希望していたのに金管?」
などと気になれば、顧問にその理由を訊いてみましょう。
おそらく理由としては、前章で挙げた楽器決めで考慮するポイントが影響している場合が多いです。
・体格:スライド管を限界まで伸ばせる腕の長さがあったからかもしれない。
・口の形:金管向きの口だったからかもしれない。
・高音と低音が出せるか:実は音出しで評価されていたのかもしれない。
顧問はコンクールで指揮をしますし、いわば監督です。コンクールで良い演奏をするために、本人が活躍するために、部活に良い影響を与えるために、など熟考してパートを割り振るはずです。
そういった理由を知れば、自分が部活で与えられた役割が明確になったり、実は自分が一番輝ける楽器に出会わせてもらっていたと気づくことができ、誰よりも意欲的になれますよ。
よくドラマである、「なんでだよ!」と没落した主人公が、その理由を知って奮起し輝き始めるといった、サクセスストーリーの主人公になれるかもしれません!
3.その楽器の魅力を知る
未知の楽器と出会うと「こんなの吹いても楽しいのかな」などと不安になることもあると思います。
そんな時は、とにかくその楽器を吹いて、しっかりお手入れして、楽器の魅力や楽しさを見出すことです。
(中学生や高校生にこんな話をするのもあれですが…)音楽に限らず、例えばビールも若い頃初めて飲んだ時は「苦っ!これのどこが美味しいんだ」と思います。
それが歳を重ねて社会人になってみると、あら不思議「仕事終わりのビールはたまらん!美味い!」と思うのです。
その楽器の良さや魅力は、すぐに理解できなくても、お酒と同じで、知れば知るほどその良さを知って、自分なりの楽しみ方が分かると思います。その過程を楽しむのが、部活動の良いところではないでしょうか。
まとめ
吹奏楽部の楽器決めで起こるトラブルを防ぐ唯一の方法は、パートを決める際の優先度にあると思います。
経験 > 適正 > 自持ち > 希望
入部する部員みんな、それぞれやりたい楽器はあると思いますし、顧問にもその希望を叶えさせてあげたいという思いはもちろんあると思います。
しかし、吹奏楽部は個人プレイではなくチームプレイということを忘れてはいけません。
希望した楽器で3年間全く吹けずに引退するより、希望していなかったけどみるみる成長して、ソロや1st.を吹いている方が、やりがいがあって楽しいと思いませんか?
そういった、自分に適した楽器なんだと気づくことができれば、良い意味で希望していない楽器になったケースですし、皆がそれを理解して受け入れれば、トラブルも防ぐことができると思います。
吹奏楽部の個人や部活全体の目標設定の例は、コチラの記事でご紹介しています。
「吹奏楽部は性格悪い」というイメージがある人は、コチラの記事で理由を整理しています。