学校のクラスの中で起こってしまう、いわゆる“クラスカースト”と同様に、吹奏楽部の内部でも楽器を理由とした“楽器カースト”が多くの学校で見受けられます。
集団における序列のことをカーストと呼び、学校のクラスに限らず、部活動など団体行動の場面ではこのカーストが当たり前のように生まれてしまうのが実情です。
今回は、吹奏楽部の楽器カーストの実情について、吹奏楽部経験者である筆者の経験も踏まえて紹介していこうと思います。
私は、学校内のクラスカーストや楽器カーストという社会問題を完全になくすことは正直無理で、実情を受け入れざるを得ないと思っています。
どこまでいっても、部員全員が同じ性格で全てを理解し合える関係は築けないですからね。
また、楽器カーストが起こってしまう結果、内部分裂が起こって「吹奏楽部員って性格が悪そう」と周りから思われてしまうこともあります。
しかしながら、誤った解釈で楽器カーストの要因を理解してしまうと非常に危険であり、逆に言えば要因さえ理解すれば、部内でのカーストの序列を上げることも可能だということを、この記事でお伝えしたいと思います。
モテる楽器ランキングと紐づけて考えてみる
楽器カーストの実情として、結論としてはメロディを主に演奏する高音楽器ほどカースト上位にあり、伴奏を主とする中・低音楽器ほど下位になる傾向が強くあります。
クラスでモテる生徒ほどクラスカーストで上位にあるように、楽器カーストにおいてもモテる楽器ほど上位にあり、そのモテる楽器というのは、やはりメロディで目立つ楽器になります。
島村楽器が「あなたは、吹奏楽部の中でどのパートの人が「一番」モテそうだと思いますか?」という質問で行ったランキングの結果も以下のようになっています。
吹奏楽モテる楽器ランキング
【島村楽器調べ】あなたの知らない吹奏楽部の世界!吹奏楽部の実態・イメージを調査 2023年7月18日閲覧 https://kyodonewsprwire.jp/release/201907309203
- 1位:サックス
- 2位:フルート
- 3位:トランペット
- 4位:パーカッション
- 5位:トロンボーン
- 6位:クラリネット
- 7位:オーボエ
- 8位:コントラバス
- 9位:ホルン
- 10位:ユーフォニアム
- 11位:ファゴット
- 12位:テューバ
サックス(ソプラノ・アルト)、フルート、トランペットがトップ3を占めるように、モテる楽器上位に君臨するのは、どれもメロディとして目立つ楽器です。
一方で、モテる楽器ランキングの下位を多く占めるのは、メロディ旋律を奏でることは少ない、中・低音楽器が目立ちます。
サックスやピッコロはソロのパートが多く、ポップスの曲ではスタンド・プレイする機会もあり、コンサートでスポットライトを浴びる頻度が多いです。
それ故に、吹奏楽に詳しくない野球部やサッカー部の部員が文化祭で演奏を聴くと、やはりそのパートに目が移り、その後ろでスポットライトを浴びず「ブンブンブンブン」と伴奏しているパートたちは暗く映りがちで、自然と序列が下がってしまいます。
そのため「吹奏楽部の女子はモテる」と言われたりするものの、実際にモテるのはカースト上位のパートだったりする現実もあります。
私はメロディより伴奏を担当することが多いパートだったため、「伴奏にも注目すると、クラシック音楽がもっと面白く感じられるのにな〜」と思っています。
また、特に中学校の吹奏楽部は多くの人が楽器未経験で入部する中、フルートはピアノ経験がある人が優遇されるため、幼い頃から音楽経験のある人が多いフルートパートなどは、楽器経験の豊富さでマウントがとれてしまうのも実情です。
結果的に、毎年春にやってくる新入部員たちも、このような人気の高音楽器を希望する生徒が多くなり、楽器を決める際に「希望していた楽器になれなかった」などのトラブルが起こります。
最悪の場合、「吹奏楽部辞めたいな」と思ってしまう部員も出てしまうのです。
ここまでで、いわゆる“楽器カースト”の序列で上位に立つのは、サックス・フルート・トランペットといった、主にメロディを担当する高音楽器であることが分かりました。
クラスカーストの決まり方と紐づけて考えてみる
さて、ここまでの楽器カーストの実情から考えると、多くの人はこう考えます。
僕はクラスカーストで三軍だから、吹奏楽部でサックスを始めれば、吹奏楽部のカーストで一軍に君臨できるぞ…!
ところが、残念ながらこうはならないのが楽器カーストの恐ろしいところです。
結論から言うと、楽器カーストと部員カーストは全く別物!
いくら楽器カースト一軍を手にしたからといって、部内での序列が上がることは決してありません。
例えば、これからテニスを始める時、「まずは形から入ろう」と高級のウェアやハイブランドのラケットを手にしたところで、いきなりテニスの技術が向上することはありませんよね。
楽器も同じく、たとえモテたくて、カースト上位になりたくてサックスを始めたとしても、本人の力量や性格が伴わなければ注目されることもなく、部内でのカーストが上がることはありません。
むしろ、クラスカースト三軍にいる控えめな性格の子が、一軍になりたくてサックスパートに入ったら、パート内で三軍に落とされるということも十分にあり得ます。ああ恐ろしい…。
つまり、いくらカーストの高い楽器を手にしたところで、自分自身のカーストが上がるとは限らないのです。
では、どうすれば楽器に頼らず自分自身のカーストを上げることができるのでしょうか。
株式会社オウチーノが行った首都圏在住の20〜39歳を対象に行った調査によると、学校のクラスカーストを決める要因は以下の結果となりました。
20歳以上を対象に行なっているため、「学校を卒業した今振り返ると…」の視点で考えられます。
「スクールカースト」の序列を決めるものは何だと思いますか?(複数回答・上位抜粋)
株式会社オウチーノ「スクールカースト」は「コミュ力」「容姿」「運動神経」、「社会人カースト」は「給与」で決まる!」2023年7月18日閲覧 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000123.000014097.html
- 1位:コミュニケーション能力
- 2位:容姿
- 3位:運動神経
- 4位:学業成績
- 5位:部活動
- 6位:異性関係
正直、2位の「容姿」はどうしようもないと思いますが、そんな2位に大きな差をつけ、ずば抜けて1位になったのが「コミュニケーション能力」なのです。
つまり、コミュニケーション能力さえ高めていくことができれば、クラスはもちろん、吹奏楽部内での序列も上げていくことが可能なのです。
たとえ容姿に自信がなくても、成績が悪くても、恋人がいなくても、明るくハキハキ会話さえしていれば、自然と人気って高まるものです。
逆に、コミュニケーション能力が欠けており、楽器カーストだけに頼っていると、部内でのカーストはもちろん、パート内での序列も下げられてしまうのです。
ちなみに、私の中学時代の吹奏楽部の部長は、1年時テューバ、2・3年時トロンボーンの部員でした。
当時は“カースト”という言葉が今の時代ほど騒がれていませんでしたが、部活を引っ張るだけでなく、コミュニケーションも活発で皆から人気があった部長たちは、楽器カーストなど関係ないと考えさせられます。
吹奏楽部の個人や部活全体の目標設定の例は、コチラの記事でご紹介しています。
まとめ
今回の記事で伝えたかったことは以下になります。
- 楽器カーストの一軍は、サックス・フルート・トランペットといった、メロディを主に担当する高音楽器。
- 楽器カーストの下位は、伴奏を主に担当する中・低音楽器が多く占める。
- 楽器カーストで上位の楽器を手にしたからといって、部内でのカーストが上がることはない。
- 部内で人気になるためには、コミュニケーション能力を身につけることが大切。
楽器はあくまでツールに過ぎず、自分自身の魅力を高め、人気を得ていくためにはコミュニケーション能力を身につけることが本当に大切です。
なぜならコミュニケーション能力は、吹奏楽部を離れた後、他の部活や社会人になってからも絶対に必要になるスキルだからです。
会話をすることが苦手でも、例えばプレゼントにお手紙を添えるだけも、立派なコミュニケーションとなります。
楽器カーストに惑わされず、どんな場面でも自分の魅力を発揮できるコミュニケーション能力を、しっかり身に付けていきましょう。
吹奏楽部の個人や部活全体の目標設定の例は、コチラの記事でご紹介しています。