2024年に開催された、東京国際指揮コンクールで第2位および聴衆賞を受賞して脚光を浴びた、ライリー・ホールデン・コート=ウッド。
オーケストラ、そして聴衆の心も鷲掴みにし、今後日本での公演の機会も増えていくことが期待されるライリーに、指揮者を志したきっかけや、日々心がけていることなどについてお話を伺うことができました!
ギルドホール音楽演劇学校をヴァイオリンで卒業。その後、王立ノーザン音楽大学で指揮を学ぶ。
ロイヤル・コンセルヴァトワール・オブ・スコットランドでも研鑽を積んだ。
マーティン・ブラビンズ、クラーク・ランデル、コリン・メッターズに師事。
2021年からオマーンのマスカット王立フィルハーモニー管弦楽団のレジデント・コンダクターを務める。
また、BBCスコティッシュ交響楽団でアシスタントを務めている。
2024年、東京国際指揮コンクール第2位および聴衆賞。
指揮との出会い
指揮者がオーケストラに与える影響ー
ヴァイオリン奏者であったライリーがその大きさに気付いたのは、地元のユースオーケストラに参加した14歳のときでした。
「当時、そのオーケストラを指揮していたのが、後に師事するコリン・メッターズ先生でした。
彼はロイヤル・アカデミー・オブ・ミュージックの指揮科の主任でもあり、とても素晴らしい指揮者で、先生からは非常に刺激を受けました。」
また、本格的に指揮への関心が深まっていったのは、ヴァイオリンを専攻していたギルドホール音楽演劇学校の時だったと、ライリーは振り返ります。
「2年次に全員が指揮を経験する機会があったのですが、そのクラスには私よりも楽器演奏に秀でた人が大勢いました。
それでも、指揮そのものに対して純粋な愛情を持っていたのは、自分だけだったように思います。
ちょうどその頃、コリン・メッターズ先生の指導を受け始め、彼も私をとても励ましてくれました。
今もヴァイオリンは続けていますが、当時から楽器そのものよりも、音楽を演奏する方が好きだったように思います。」
指揮者として、人として大切にしていること
指揮者として世界へ歩み出しているライリー。指揮者として大切にしていることは、2つあると言います。
「最初に偉大な楽曲に向き合うときは、正直なところ圧倒されることもあります。
なぜなら、これまでの偉大な音楽家たちが同じように作品と向き合い、自分なりの解釈を築き上げてきたことを意識せざるを得ないからです。
でも、そうしたプレッシャーは一旦脇に置き、例えばモーツァルトであれば、ただモーツァルトの音楽に向き合う。
自分がその作品を生き生きと蘇らせる一員であることに幸運を感じ、音楽に心を開くことが大切だと思っています。」
「オーケストラの前に立つことは、ときに怖さを伴いますが、ポジティブな気持ちを忘れなければ、それは最高の経験にもなり得るのです。
私は、仲間と共に音楽を作り上げ、一つの呼吸で一緒に表現していく瞬間が大好きです。それこそが魔法のような体験だと思います。」
2024年に行われた東京国際指揮コンクールでは第2位に輝くだけでなく、聴衆のハートもしっかり掴んで聴衆賞も獲得。
オーケストラと作り上げる魔法のような音楽は、聴衆の心にも響いていたことが証明されます。
あのコンクールのことを、ライリーはこう振り返ります。
「芸術の世界において『競争』というものは本来奇妙なものだと思っています。音楽はスポーツではありませんからね。
でも、コンクールが音楽界の一部であることも理解していますし、結果として決勝まで進むことができたおかげで、素晴らしい機会を得ることができました。
何よりも、自分にとって初めてのコンクールだったため、何を期待すればいいのか全く分からない状態でした。それでも、なんとか緊張を抑えながら臨むことができたと思います。」
また、東京国際指揮コンクールの直後には、スコットランドでBBC スコティッシュ・シンフォニー・オーケストラを指揮する機会を得ました。
「彼らは世界トップレベルのアンサンブルであり、そんな素晴らしいオーケストラと共演できたことは、私にとってかけがえのない経験となりました。
2024年は、自分にとって本当に刺激的な一年になったなと思います。」
そして、ライリーは父のある言葉をもとに、これからの指揮者・そして人としての成長を目指しています。
《人には耳が二つ、目が二つ、口が一つある。それらをその割合で使いなさい。》
「父はよくこの言葉を使っていました。要するに『自分がしてほしいように、他人にも接すること』。そして『人の話をしっかり聞くこと』。
特別なことではなく、基本的なことだとは思いますが、この言葉が私は好きです。
常に誠実であり、何よりも音楽そのものを考え続けられることを大切にしていきたいと思っています。」